がエネルギッシュに演じ、嘉兵衛の妻、おふさを人気女優、鶴田真由が好演し、話題を呼んだ。ドラマの内容はこうだ。淡路島の貧しい農家に生まれた嘉兵衛(竹中)は、網元の娘、おふさ(鶴田)と恋に落ち、近藤正臣演じるおふさの父で地元の網元、網屋幾右衛門から逃げるようにして、淡路島を出て兵庫津へ。村井国夫演じる神戸の廻船問屋、堺屋喜兵衛のもとで、船乗りとして修業する姿が臨場感豊かに活写された。この後、嘉兵衛は、兵庫随一の廻船問屋、北風荘右衛門(江守徹)の家で住み込みで働きながら、天才的な操船技術を発揮し、船頭として頭角を現す。船頭頭となった嘉兵衛は、弟の金兵衛(筧利夫)とともに高田屋を創設。兄弟で神戸から北海道へと進出し、函館に高田屋の拠点を興す。だが、〝未開の蝦夷地〟で嘉兵衛は大国・ロシアの脅威に直面することになる…。 =続く。 (戸津井康之)ンポポなど黄色い花が大好きだったことで知られている。私は産経新聞大阪本社の文化部で長らく勤務していたが、司馬は文化部記者としての大先輩にあたる。彼は産経新聞大阪本社の文化部長などを経て作家へ転身した。数々の傑作を書き遺し、司馬は1996年2月12日、72歳で亡くなった。彼の命日は「菜の花忌」と呼ばれ、毎年、この日に彼を顕彰する記念行事が開催されている。嘉兵衛を主人公とする小説のタイトルに、司馬は自分の最も好きな花、菜の花をとり入れ、「菜の花の沖」と付けている。歴史上活躍した武士や軍人などを主人公にした小説を数多く手掛けてきた司馬にとって、民間人を主人公にした作品は多くない。そこからも嘉兵衛に傾注した司馬の熱い思いを窺い知ることができる。現代人を魅了する生きざま小説「菜の花の沖」は1979年4月1日から1982年1月31日まで。実に3年近くにわたって産経新聞で連載された。その後、全6巻(文春文庫)の長編小説として書籍化され、ロングセラーとなり、今でも司馬の代表作のひとつに挙げられる。舞台化や映像化もされてきた。1999年には人気脚本家、ジェームス三木の脚本により、秋田県を本拠地とする劇団の「わらび座」が全国公演を開催。2001年3月、神戸での最終公演を終えた後、観客たちから劇団へ贈られた多くの花束が、嘉兵衛の墓前に供えられたという。また、この小説を原作に、嘉兵衛の物語が、NHK大河ドラマの候補に挙がったこともある。大河ドラマ化は実現していないが、25年前の2000年、NHK75周年記念番組として、「菜の花の沖」のタイトルで全5回の連続ドラマが制作され、全国放映された。嘉兵衛を実力派、竹中直人133
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