KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年9月号
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さんが多いですね。検査方法が進歩して、血液検査で膠原病の疑いが判明するケースも増えてきました。他科での治療で改善されないから紹介されるというだけでなく、採血検査の結果を基に他科の先生方から「膠原病の症状ではないでしょうか」という紹介で来られる患者さんもおられます。―診断は血液検査でできるのですか。血液検査で自分に対する抗体を持っていることが分かったとしても、必ずしも発症しているわけではありません。リウマチならば関節に炎症が起きているのかを超音波やMRIで確認します。腎臓なら腎生検、肺なら気管支内視鏡検査などそれぞれの方法で検査をして病理診断をします。血液検査の腫瘍マーカーが陽性だからといって必ずしも癌ではないのと同じです。少しずつ進歩する、暴走する免疫を抑え込む治療法―膠原病、リウマチの主な治療法は?ほとんどのケースで免疫の攻撃力を弱める薬を使う内科的治療が先行します。ばい菌に対する免疫力が弱くなるという副作用は避けられません。―暴走する免疫だけをターゲットにして抑え込むことはできないのですか。免疫の中から暴走しているものだけを選んで直接正すことはできません。免疫を「川」に例えると、せき止めて流れの行き先を変えるというような工事が人間の体の中ではできず、川の流れを緩めることしかできません。免疫をまとめてある程度抑え込まなくては治療ができないという段階です。特異的な治療法も少しずつ開発され、正しい流れに戻す方法も多少は出始めています。―新しい薬が開発されているということですか。特定のたんぱく質にだけ効く抗体をばい菌に作らせて薬にするという生物学的製剤と呼ばれるものです。体のいろいろな所で効果を発揮する薬の対極にあり、範囲が狭くて特異性の高い分子標的薬の一種です。いくつかの薬が開発されていますが、中でもリウマチについては関節を攻撃しているある種のたんぱく質をターゲットにする阻害薬が2002年に開発されて治療法が大きく進歩してきました。ただし、それだけで治療が完璧にできるという段階ではありません。診療科枠を超えた診療のための環境づくり―他の診療科との協力は?例えばリウマチで変形した関節や血管炎で起きた大動脈乖離など、ダメージを受けた部分の修復は内科の領域ではなく、整形外科や心臓外科に手術をお願いします。皮膚には症状が一番に出やすく皮膚科との協力は欠かせません。腎臓内科や脳神経内科とは年2回の症例研究会を開いて情報交換をしています。膠原102

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