関西を散歩していると『力餅食堂』という飲食店をよく見かける。明治22年、豊岡市で饅頭店として創業。店名は創業者・池口力造翁の「力」と商品の「餅」に由来。同店はメニューやサービスも異なり資本関係はなくチェーン店でもない。最大の特徴は「のれん分け制度」。「但馬」出身者を中心に雇用し8年間の修行を経て一人前として開業できる。以前から私は業務形態に魅力を感じ「同郷ネットワーク」「ボランタリー・チェーン」の観点から研究をしている。 そんな店主たちが「郷土の誇り」と口を揃えて言うのが「但馬牛」だ。寡黙で力強く勇ましい姿は、まさに地元が生んだヒーローと言える。小型ながら均整が取れ、筋肉のきめが細かいブランド牛の素牛。中でも一定の基準(格付け・月齢・重量など)を満たした枝肉だけが「神戸牛」と名の乗ることができる。神戸市須磨区にある『須磨海浜公園』の一角には「但馬牛」の等身大像が1961年から設置されている。これは新聞社が食肉関係団体から寄付を募り、神戸市に寄贈したものだ。日頃、牛の姿を目にする機会の少ない都市部の子供たちに対しリアルな教材として愛され続けている。プレートには「神戸肉の但馬牛」と刻まれており地域ブランドのルーツを示す重要な役割を担っている。『神戸須磨シーワールド』へ行った際には立ち寄って欲しいスポットである。第140回地元にまつわる妖怪・UMA・生物の謎を探る!!『ひょうご五国の怪物たち 但馬・和牛』神戸のカクシボタンkakushi button写真/文 岡 力■岡力(おか りき)放送作家・コラムニスト・イラストレーター、ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆、番組を企画。日本放送作家協会関西支部事務局長・大阪芸術大学短期大学部客員教授、心斎橋大学・神戸電子専門学校講師。悠然と立つ兵庫が生んだヒーロー「但馬牛」像『須磨海浜公園』兵庫県神戸市須磨区若宮町1丁目3JR須磨海浜公園駅から徒歩約7〜8分 91
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