―神大病院が中心になって進めている主要病院の病理診断ネットワーク化は進んでいるのですか。遠隔診断網をより広範なものにしようとしています。近々、淡路とも繋ぐ予定です。しかし規模の小さな一般病院では高額な設備を整えるには無理があります。そこで、臨床検査会社とタイアップし、センターを開設してデジタルデータを集約化する取り組みを進めています。―病理学や病理診断は日々進歩しているのですか。 最近は病理学にも分子学的な観点が必要になってきて、例えば特定の遺伝子変異を調べることなどが病理診断にも大きく関わってきます。また新薬の開発も目覚ましく治療薬の適応を決定する役割も増えています。病理でやるべきことがどんどん増えてきていて、病理医は日々勉強です。Q.ご自身の健康法とリフレッシュ法は?A.うーん、健康法は難しいけれど、美味しいものをいっぱい食べることかな(笑)。リフレッシュ法は「夫婦仲良く」。家に帰るといつもニコニコ笑顔で「おかえり」と言って迎えてくれるので、ストレスがあっても全部忘れてしまいます。間違いなくこれが私の最大のリフレッシュになっています。Q.日頃、学生さんや若い先生方に接するにあたって心掛けておられることは?A.私が常に言っているのは「顕微鏡の次に大事なのは電話だ」。例えば、臨床の先生方が予想もしていなかった病変が見つかったとき、逆に病理では分からないことがあるときなどはすぐに臨床に電話をかけてディスカッションをします。カンファレンスでも、他の先生方の顔を見ながら言葉のやりとりをします。こうして病理と臨床の信頼関係が生まれます。文書のやり取りだけではできることではなく、マイペースで仕事ができるとはいえコミュニケーション力は大事です。Q.病理医としてやりがいを感じることは?A.自分が出した診断が確定診断になり、その後の治療のすべてが動くということがやりがいになります。特に肝移植緊急生検の場合には病理診断の結果次第で治療が変わります。外科の先生方が固唾をのんで結果を待っておられます。責任の重さと大きなやりがいを感じるときです。Q.病理診断科の職場としての魅力は?A.患者さんを前にして診断をするわけでないのでマイペースで仕事ができること。教科書を見ながらゆっくりと頭を使って考えたり、周りの先生方と相談をしたりして診断を出せます。伊藤先生にしつもん89
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