済界の事業主負担増で、税金は金融所得をフローのみならずストックも勘案する、資産所得に対する分離課税見直し、社会保障目的税化した消費税増税も考慮できるのではないでしょうか。ただし負担は理屈ではなく納得ですので、丁寧な合意形成が重要です。─いずれにせよ超高齢社会の進行に伴い、医療を含む社会保障費の増大は避けられませんね。生島 そのような状況でも私たちは国民皆保険を堅持しつつ、持続可能な医療制度の構築を目指す必要があると思います。そのためには負担増を懸念するのではなく、社会保障費を社会全体にメリットをもたらす「投資」と位置づけ、適切な財源確保と医療・介護・教育・保育に関する制度改革を進めることが重要ではないでしょうか。識でした。しかしながら社会保障は経済のメカニズムの中に組み込まれていますので、経済活動それ自体の一つという側面もあり、国民経済を支えているとも言えます。医療や介護、保育といった社会保障のサービスは雇用を創出し、付加価値を生み出していますから、経済や産業と社会保障の関係は多面的に考える必要がありますよね。少子高齢社会における医療・介護ニーズの拡大は、生産と消費が同じ地域で完結するサービス業の特性により、特に地方で雇用促進に貢献していますので、地域経済を活性化させ日本経済の持続性にもつながるでしょう。─しかし、財源の問題があるのではないでしょうか。生島 私見ですが、不毛な世代間対立を防ぐためにも、自己負担に関して負担率は全年齢層一律が望ましいと思います。保険料は被用者保険の将来的な一元化や産業界・経所得の伸び悩みにより、税や社会保険料の財源が抑制され、さらに社会保障費が抑制され国民不安が増大するといったミクロ経済とマクロ経済の合成の誤謬が生じると思量されます。─ならば逆に、社会保障費を厚くして経済成長に結びつけられないでしょうか。生島 保健衛生・社会事業を支えるのは医療・福祉・介護などの業種ですが、その価格は公定価格であり、抑制されているため労働生産性が上がる訳がありません。しかし、高齢社会になりますますニーズが高まるこれらの業種を、日本の経済のけん引役と位置づけて消費や税収のもととして考えると、例えば診療報酬を上げるだけでもGDPも上がる、労働生産性も上がる、税収も増える可能性があると思います。小泉政権で社会保障費を削減する方針が明示されて以降、長い間経済界では社会保障=負担というのが常84
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