KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年8月号
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兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第167回いうイメージですが。生島 報道などでは負担面だけが強調されがちですが、負担と給付をワンセットで考えるべきです。社会保険の所得再分配は、いま必要でない人からいま必要な人への保険的再分配と、必要でない時から必要な時への時間的再分配が主な働きであり、賃金システムが対応を不得意とする支出の膨張や収入の途絶に対して消費の平準化をおこなうものとも捉えることもできます。─日本の社会保障費はどれくらいの規模なのですか。生島 社会保障給付費は2024年度予算ベースで138兆円、医療費は42.8兆円とその中の31%を占めています(図1)。社会保障のための「公費」は国の歳入の大きな部分を占めており、給付と負担のバランスについて不断の検討の必要性がうたわれています。一方でであり、マクロにおいては基礎的消費部分を社会化することにより広く全国に有効需要を分配するための経済政策手段であると解説し、再分配は格差の是正と社会の安定につながるという見解を示しています。─社会保障は負担が大きいと─国民の生活を生涯にわたって支える社会保障ですが、経済という視点からはどのような役割がありますか。生島 経済学者の権けんじょう丈善よしかず一先生は、社会保障について、ミクロにおいては貢献原則に基づいて分配された所得を必要原則に基づいて修正する再分配制度社会保障費と医療財源について兵庫県医師会 医政研究委員会委員いくしま内科クリニック 院長生島 雅士 先生80

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