KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年8月号
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質量なのですから、重い粒子だと数は少なくとも必要条件は満たし、軽い粒子だと相当な数がないとそれを満たさない、ということです。ですから、たとえば「軽くて数が少ない」などという粒子は候補から外せるのです。こうして残った候補としては、重いほうには、WIMPがあります。これは実は粒子の名前そのものではなく、「Weakly Interacting Massive Patticle(弱く相互作用する重い粒子)」という、今回説明した性質をそのまま書いたような一文の略称で、このような粒子の総称です。具体的な粒子としては、ニュートラリーノがあります。いっぽう、軽いほうの候補は、アクシオンです。これらの粒子がそれぞれどんなものなのかは次回お話するとして、今回は、もうひとつ、重要な点に触れておきます。今挙げた候補で、すでに発見されているニュートリノと、いまだ発見されていないニュートラリーノとアクシオンとでは、大きく異なる点があります。そらいない粒子です。前者は、本連載をずっとお読みくださっている方は、すでにご存じのはずです。そう、本連載の初期の主役であった、ニュートリノです。ニュートリノには、いくらかまではわかっていませんが、質量があること自体はわかっています。その質量いかんによっては、宇宙全体の質量を説明できるようになるかもしれません。質量がいくらかは、今後、我々素粒子物理学者が解き明かしていくことになります。後者は、「いまだ発見されていない」ということですから、言ってしまえばなんでもありなわけですが、実はすでにいくつか候補が考えられています。これらの中でも、さらに二つに分けられます。重いか、軽いか、です。ずいぶん漠然とした分けかたですが、あとで説明するように、重い軽いの違いは相当大きくて、質量にして何桁も違います。重いか軽いかのなにが重要なのかと言うと、「こうであってほしい」というのは宇宙全体で見た総宇宙初期に起こった現象から計算するに、そもそも、我々が普通に扱う電子や陽子といった物質は、その量が宇宙のほんの一部しか占めないので、それ以外の「なにか」である必要があります。このようなことを鑑みるに、暗黒物質の候補として考えられるのは、なんらかの粒子で、しかも電子や陽子と反応しにくい、つまり観測しにくいものである必要があります。というのは、反応しやすければ、それらとくっついて(反応して)、塊になってしまったりしますし、そもそもこれまでの長きにわたる科学の歴史の中で、観測されていない、などということが起こりえないからです。通常の物質と反応しにくいからこそ、我々に観測されてこなかった、つまり「暗黒」だったのです。通常の物質とは反応しにくい粒子には、大きく分けて二つあります。ひとつは、すでに発見されている粒子です。もうひとつは、あまりに反応しにくいために、いまだ発見されてす41

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