2本ずつ撮ってたのですが、その間、何時も、次の寅次郎はどうするかを考えていました。喫茶店に入っても、「寅次郎ならバイトの子やマスターになんて声をかけるだろう」「寅次郎はここでどんな人間関係を築くだろう」というふうに。すごい人だなと思っていました。Q.寅さんは愛情をもらって生み出されたんですね。本当に愛されていました。寅次郎はよく人とぶつかりますが、憎しみではなく、愛情があるからぶつかるんです。人間関係って誰しも壊れることを恐れますが、でも寅次郎の場合、愛情があるから何があっても壊れない。それから、故郷があるのも魅力のひとつだと思います。生まれ育った故郷は柴又ですが、寅次郎が行く街では必ず人との出会いがあって、そこが第二、第三の故郷になる。Q.やっぱり「街」と「人」ですね。山田さんの影響、受けてますね(笑)。25年くらい一緒にやってきましたから。Q.„師匠”ってどんな存在ですか。人から学ぶって簡単なことではないと思います。ですが、人からしか学ぶことができないものはあると思います。師匠は、たとえ巨匠と言われる人であっても神様ではないんです。作品に辿り着くまで、ものすごい悩みがあって、解決までの過程があって、それを大小いくつも繰り返して完成に近づいていったはず。先ほどお話した喫茶店での姿もそう、私は山田さんのそういうところを見てきました。 でも神様じゃないので、すべてを尊敬はしていない。人だから、えっ?って思うこともある。そこがおもしろいところじゃないでしょうか。映画「蔵のある街」監督・脚本:平松恵美子 出演:山時聡真 中島瑠菜 堀家一希 櫻井健人 田中壮太郎 陽月 華 長尾琢磨 前野朋哉 ミズモトカナコ 北山雅康高橋大輔 MEGUMI 林家正蔵 橋爪 功音楽:村松崇継主題歌:手嶌葵「風につつまれて」(ビクターエンタテインメント)企画・製作:つなぐ映画『蔵のある街』実行委員会制作プロダクション:松竹撮影所企画協力:倉敷市配給・宣伝:マジックアワー特別協賛:高砂熱学©2025 つなぐ映画「蔵のある街」実行委員会2025年8月22日(金)テアトル梅田、シネリーブル神戸ほか全国公開公式HP【プロフィール】平松恵美子1967年、岡山県倉敷市生まれ。岡山大学理学部在学中に自主上映サークル「岡山映画鑑賞会」で活動。卒業後、鎌倉映画塾の第一期生として入塾。山田洋次監督のもとで助監督・共同脚本を務め、『男はつらいよ寅次郎紅の花』(95)などに参加。『ひまわりと子犬の7日間』(12)で映画監督デビュー、松竹では半世紀ぶりの女性監督となる。『十五才 学校Ⅳ』(00)、『武士の一分』(06)等の作品で、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。近年の監督作品に『あの日のオルガン』(19)。脚本・助監督作品に、『母べえ』(07)、『おとうと』(10)、『小さいおうち』(14)、『家族はつらいよ』シリーズ(16・17・18)。脚本作品に『いのちの停車場』(21)等がある。取材協力:テアトル梅田39
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