KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年8月号
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『INNOVATION OPERA~ストゥーパ~新卒塔婆小町~』を制作。佐久間は主演の小野小町を演じ再演が続いた。「佐久間さんが舞台に立つだけで、そこが明るく輝きました」と西本は、その唯一無二の才を賞賛。「今回のコンサートは、バロック音楽を中心とした初めての企画です。佐久間さん主演の『細雪』の世界観に着想を得ました」この秋、芦屋市がコンサート初演の場となる。女優、そして母として1939年、東京で生まれた佐久間は1957年、東映ニューフェースのオーディションで選ばれ、第四期生として東映に入社。銀幕デビューするや、すぐに頭角を現わす。テレビドラマにも出演依頼は相次ぎ、NHK大河ドラマ『おんな太閤記』で豊臣秀吉の妻、ねね役で主演に抜擢される。大河ドラマ史上、初めて女優が主演を務めたことが話題を呼び、西田敏行演じる秀吉が、ねねを呼ぶときのセリフ、「おかか」がその年の流行語に選ばれるなど社会現象を巻き起こした。東映の大作映画で、『五番町夕霧楼』他、女優として単独で初主演を務めたのも佐久間。2011年、岡田茂・東映名誉会長の葬儀・告別式で俳優を代表して弔辞を読み上げたのも彼女だった。〝女優の王道〟を歩み続ける人生は、生まれながらに定められた宿命のようにも思える。名優、平幹二郎と結婚し、授かった双子の長男、平岳大は、現在、米国を拠点に活躍する国際派の俳優だ。岳大が9歳のときに離婚したが、「小学校の授業参観などは、女優の仕事のスケジュールをできるだけ調整し、最優先して出席していました」と明かす。華やかで多忙な女優としての仕事を貫く一方、母親としての責務を両立させようと、子育てにおいても一切、手を抜くことを自ら許さなかったのだ。昨年、真田広之が主演、プロデューサーを務め米国で製作し、世界配信された時代劇大作『SHOGUN 将軍』が大ヒットし、話題を集めた。米国の有名賞レースの「エミー賞」では真田広之が主演男優賞を受賞し、助演男優賞にノミネートされたのが岳大だった。「表彰式の直前にアメリカにいる岳大から電話がかかってきました。『お母さん、一緒に表彰式に出席してほしい』と。『どうして私が。奥さんと一緒に出席しなさい』と答えたら、岳大のお嫁さんと二人から『お母さんに出てほしい』と言われました」授賞式当日。会場で岳大と並んで座る佐久間の姿が世界に中継された。女優としての矜持日本を代表する銀幕のスター女優は、世界の映画人にとっても憧れの存在だ。堂々25

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