『細雪』で挑む〝競演〟小説『細雪』は、大正末期から昭和初期にかけての〝阪神間モダニズム〟の世相を背景に、大阪の旧家に生まれた四姉妹の物語を描く、谷崎文学を代表する一作。発表以来、映画、ドラマ、舞台化が繰り返されてきた。佐久間は、1983年に市川崑監督がメガホンを執った映画『細雪』で四姉妹の次女、幸子役で主演した。「佐久間さんは市川監督映画『病院坂の首縊りの家』(1979年)でも主演され、その美と哀しみの憂愁に感銘を受けてきました」。西本は、女優・佐久間の魅力を最大限引き出すべく、〝朗読と音楽の融合〟を模索していた。二人の出会いは長く、約10年前に遡る。2015年、京都・泉涌寺で開催された西本指揮による音舞台で初めて二人は共演。2017年には、西本智実 指揮・脚本・演出を務め、当日は演奏の指揮を執る西本が、企画の意図について説明してくれた。「私は関西出身で、芦屋市といえば、やはり谷崎潤一郎の小説『細雪』を思い浮かべます。そして映画『細雪』で主演されたのが佐久間さん。この小説や映画の世界を観客の方たちに想起させるようなコンサートにできれば、と考えています」そこで、佐久間がアイデアを出したのが、この「船場言葉のセリフ」だった。「今日も、佐久間さんと相談しながら、脚本の構想を練っている最中なんです。船場言葉を、どう使おうかなと…」と西本が笑った。う朗読しようか」と思案しているように見えた。「朗読の脚本のどこかに船場言葉(大阪・船場に由来する独特な方言)のセリフも入れたい。そう考えているんですよ」今回のコンサートで佐久間は音楽の演奏に合わせて朗読する。このコンサートの芸術監督『INNOVATION OPERA ~ストゥーパ~新卒塔婆小町~』より24
元のページ ../index.html#24