KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年8月号
19/124

つまり消失点が2つある。普通の風景画は、中央に1本の道があるという絵をご覧になった人は多いと思います。秘的な光景を現出していたのです。1本の道が、白い壁の家をはさんで左右に分かれている。つまり、絵の消失点が1つなのです。その消失点が、僕が撮った写真には2本あるのです。このような構図の絵はどこにもありません。これこそ芸術的な風景です。これは大発見だと叫んだ僕は、予定していた日程を変更して、町の画材店からキャンバス、筆、絵の具を購入して、早速この絵を描きました。出来上がると同時に、もしや他にもこのような場所があるかもしれないと、再び町に出掛けました。すると、至る所に、この三叉路があるじゃないですか。そして、もう1日滞在を延長して、いくつかの場所の写真、それも全て夜景を撮りました。そしてその場所を「Y字路」と命名しました。それ以降、日本のY字路を訪ね、現在は200点近く描いたのではないかと思います。このY字路の絵を見た人の中には、「人生の岐路か」と問う人がいます。また、「左右どちらへ行けばいいのでしょうか」と言う人もいます。こんな僕のY字路の絵に触発さ《暗夜光路 N市-I》2000 横尾忠則現代美術館蔵19

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る