KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年7月号
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要素があるのですか。特定の遺伝子の傷により発症する「単一遺伝子疾患」とは異なり、アトピー性皮膚炎は「多因子疾患」です。何十もの遺伝子が関わり、さらに環境因子も影響し、悪い状態の皮膚を治さずにいるとどんどん悪化して治りにくくなってしまいます。世の中には正しい情報だけでなく、間違った情報もあふれていますが、惑わされることなく乳幼児期に保湿やお薬できちんと治して良い状態の皮膚を保ってあげれば、アトピー性皮膚炎の悪化を予防できるだけでなく、食物アレルギーや小児喘息の予防にもなります。皮膚科専門医を受診して、処方されるお薬で正しくコントロールして早い時期に治してあげられるかどうかによって、お子さんのその後の人生が大きく変わってきます。なお、お住いの地域の専門医は日本皮膚科学会ホームページの皮膚科専門医MAPで検索できます。Q.若々しい肌を保つ秘訣は?A.タバコはシミや色素沈着の原因になるので避けましょう。次に過剰な紫外線を避けましょう。例えば、細かいシワは加齢によるものですが、深いシワの主な原因は紫外線による光老化です。ただし、紫外線によってビタミンDが生成されて骨を頑丈にしていますから、極端に避けるのはダメです。日陰で肌を出して適度に紫外線を受けて、日焼け止めなどで光老化を予防すると若々しい肌が保てます。Q.神大病院の「良いところ」は?A.診察後に会計受付機で「後払い利用」をタッチするだけでサッサと帰れる「医療費後払いサービス」です。スマホやパソコンから一度事前登録してしまえば、その後ずっと有効です。診察が終わってからさらに会計で待たされるストレスから完全に開放されます。広く知っていただけたらいいなと思います。Q.研究から皮膚科の臨床に戻られたのは何故ですか。A.基礎研究者として細胞生物学を10年ほど続けていた中で、さまざまな遺伝子や細胞の研究をしていましたが、なかなか体全体のことを調べることができませんでした。そこで皮膚科に戻り細胞生物学の経験を生かしながら、患者さんの体に何が起きているのか、遺伝子の傷が症状にどう結びついているのか、どう治してあげられるのかを研究し、診療に役立てたいと考えました。Q.患者さんに接するうえで心掛けておられることは?A.患者さんの心に寄り添いつつ、深刻になり過ぎず、患者さんから笑顔を引き出すことでしょうか。「診察室の中で何を話しているかまでは聞こえないけれど、いつも笑い声が聞こえてくるのが素敵です」と患者さんに言っていただいたことがあります。生まれつきの疾患とつきあっていくことは本当に大変なことですが、正しく疾患の仕組みを理解して、自分の体の中で何が起こっているのかを分かっていただくことで患者さんが得られる安心があります。病気と一緒に暮らしていく元気を育む外来であり、共に闘う診療でありたいと思っています。久保先生にしつもん87

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