KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年7月号
68/124

ないようだ。技術があって生産できればそれで事が済む訳じゃないことは、現場を覗いてみないとわからない。そんな靴づくりに欠かせないのがラスト(靴型)。その製造を手がける大山へもお邪魔してみた。靴メーカーのオーダーを受け、CADデータからマシンで木を削りさらに人の手で微調整、それをまたスキャンしてCADデータにして微修正…という感じで、最終的にはプラスチックのラストをサイズごとに生産していくが、デザインを左右するなめらかな曲線は繊細な手仕事ならではだ。このような靴メーカーを支えるさまざまな業種が街のあちこちにあり、まさに長田は街ごと靴のファクトリーなのだ。ミシンの音が街の音靴だけではない。ファッション都市、神戸は、長田のものづくりの実力なくして成り立たない。神戸ザックIMOCのアトリエでは、古いミシンからモダンなリュックやバッグが生み出されている。1971年から山男たちに愛用されているザックメーカーを、5年ほど前に登山家でもある創業者から事業継承。思いもミシンも受け継ぎつつ、ファッションを学んだ若い女性の感性も生かしながら、アウトドアのみならず街や旅先でも気軽に使えるようにデザインを進化させている。そして作業はほぼすべて手作業。心を込めて操るミシンが、伝統と未来を縫い合わせているようだ。一方、1933年創業で製品を皇室にも納めている老舗刺繍メーカー、金川刺繍では、日本に3台しかない最新のミシンが熾リ株式会社(神戸ザックイモック)熾リ株式会社代表取締役前川 拓史さん半世紀の歴史をもつオリジナルデザインのザックを事業承継。若きクリエイターたちが、伝統と技術を守りながら型紙、断裁、縫製全ての工程を行う。アウトドアや気軽に使えるデザイン性の高い商品を生み出す。68

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る