■重鎮監督からの出演依頼約半世紀前、日本を震撼させた実話をベースに描いた話題作『「桐島です」』は今年3月、大阪市で開催された「大阪アジアン映画祭」のクロージング作品として映画祭最終日にお披露目され、注目を集めた。舞台あいさつには日本映画界の重鎮監督、高橋伴明、その妻で女優の高橋惠子も登壇した。「『「桐島です」』というタイトルを聞いた瞬間、これは凄い作品になる。そう確信しました」と語るプロデューサーを務めた高橋惠子の並々ならぬ意気込みが会場中に伝わった。「本当なら僕も会場へ駆けつけたかった。でもちょうど、その日は撮影が入っていて…」主演も脇役もこなす、今、勢いのある“旬”の俳優はこう話しながら悔しがった。映画監督を目指し、広島県の高校を卒業後、上京。映画の専門学校に通い、監督として自主製作映画を手掛けながら、俳優デビューした苦労人でもある。今回の主演抜擢はどうやって決まったのか。「まず、脚本が送られてきて、それを読んだうえで高橋監督と会いました」高橋監督と一時間ほど話し込んだ後、突然、こう聞かれたという。「それで、結局どうなんだ。この役をやるのか、やらないのか」と。答えは決まっていた。「やります!」それ以外の返答は考えられなかったという。この日を遡ること16年前のことを毎熊は思い出していた。「実は僕は高橋監督の映画に出演したことがあるんですよ」作品のタイトルは『禅 ZEN』(2009年公開)。鎌倉時代の僧、道元の生涯を描いた映画だ。毎熊は若い修行僧の役で出演している。「エキストラを募集していたスタッフから、『今日、剃髪してくれたら、明日の撮影に参加してもらう』と言われたんです」いきなり、「今すぐ“坊主頭”にしろ」と言われ、どう答えたのか?「わかりました。すぐに頭を剃ってきます、と即答しました。セリフもない役でしたが」と笑いながら振り返った。このエキストラから16年後に高橋監督から直接、出演を依頼され、主演俳優の座をつかみ取ったのだ。■実在の人物を演じるプレッシャー映画『「桐島です」』の主人公は、1970年代の連続企業爆破事件に関わった指名手配犯、桐島聡がモデル。約半世紀にわたる桐島の逃亡生活が、フィクション63
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