落とし込もう」と考えたのだ。そうして「島国の共鳴」を発想の起点に、「無常」「間柄」「風土」という3つのテーマを決定。播州織産元商社の「桑村繊維」「内外織物」「丸萬」が提供した既存の生地を活用するとともに、丸萬の協力を得て、兵庫の海や山を彷彿させるオリジナル生地も制作。わずか3ヵ月で、作品を完成させた。4月26日から開催した大阪・関西万博会場での「ひょうご国」の展示では、華やかで軽やかな播州織ファッションが来場者を魅了。董さんは「今回、創作のコアとなったのが温故知新の考え方。伝統の知恵を大事にしつつ、斬新なアイデアと融合させることで、文化や風土を次のステップとなる未来へ繋いでいける。約250年の歴史を誇る播州織の自然な風合い、細い糸が織りなす繊細な肌触りを通じて、北播磨の自然や文化の繊細さ、人と人、人と自然の繋がりを大事にする丁寧さ、変化のなかにある永劫などを感じてもらえれば」とデザインに込めた思いを語った。台湾実践大学ファッションデザイン学科の副教授・董雅卉(Masa Tung)さんが「播州織」の産元と協力し、生地の魅力を最大限に引き出した3つのスタイルを完成させた。公益財団法人神戸ファッション協会が播州織PR活動の一環として企画。コラボレーションのオファーを受けた董さんは2024年11月、播州織の産地、兵庫県北播磨地域(西脇市・多可町)を訪問。その繊細な織り目や美しい色彩に感動し、播州織が地場産業として発展してきた歴史や環境、文化的な背景も含めて表現したいと考えたそう。デザインのアイデアを練るなか、自身が影響を受けた兵庫県出身の哲学者・和辻哲郎の著書「風土」を思い出す。「文化や価値観は土地特有の自然や気候による〝風土〞と密接に関係するという彼の思想を主軸にしてはどうか?台湾も日本同様、季節性の風土に影響を受ける島国。同じ島国に生きる者として対話を重ね、デザインにAbout 董雅卉さん2004年第一回日本高島屋国際奨学金人材育成プログラムで奨学金を獲得し、4年間日本に留学。その後、東京の文化服装学院に進学、卒業後は日本企業に勤務。高島屋の支援を受け、自身のブランド「PUREDESIGN」を東京で設立。台湾帰国後は日台のデザイン交流を推進。2012年より実践大学にて教鞭をとり、現在に至る。実践大学教学イノベーション教材・カリキュラム奨励特優賞(2025年)など、受賞歴多数董雅卉さん(大阪・関西万博の展示会場にて)HYOGO×台湾実践大学台湾と日本、島国の共鳴を発想の起点に43
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