〝洋画の巻き返し〟を牽引2023年に公開された洋画で、興行収入が10億円を超えた作品は15本。昨年は10本にまで減った。これに対し、佐藤GMは、「ハリウッド業界のストライキで大作の公開が延期され、日本にも影響が出ましたが、今年は間違いなくヒット作は増えるでしょう」と自信を見せる。この言葉通り、今年始めから洋画のヒット作は相次ぎ、洋画業界全体を牽引しているのがディズニー作品だ。今年の後半戦も今月25日から公開される『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』やディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』など、期待作が目白押しだ。この〝ディズニー映画の強さ〟を支える要因について、佐藤GMは、「3つの大きな柱があります」と語る。一つ目は、「テーマが普遍的であること。その普遍性は、どの世代、どんな国や人種にもあてはまる」と説明する。二つ目は、「映画の登場人物たちが、長く愛されるキャラクターであること」と言い、「『アナと雪の女王』などに代表される〝ディズニー・プリンセス〟は、いつの時代も、ずっと幅広い世代に支持される高い人気を誇っています」と続けた。そして三つ目に、「音楽性の高さ」を挙げて、こう説明する。「『アナと雪の女王』の主題歌『レット・イット・ゴー』や、『アラジン』の主題歌『ホール・ニュー・ワールド』など誰もが聞いたことのある、また、多くの人が大好きな曲が劇中で使われていること。映画にとって音楽はとても重要な要素。そこにディズニーは力を入れてきました。この3つは、ディズニー映画の最大の強味なんです」 これまで、ディズニーが築き上げてきた〝ヒットの方程式〟のカギ、そのヒントを分かりやすく分析して見せてくれた。ヒットの陰の苦労佐藤GMのこれまでのキャリアをたどっていくと、〝エンターテインメントの申し子〟が、どうやって誕生するのか、その過程を見るようで興味深い。「実は最初から映画ビジネスに興味があったわけではなくて、大学卒業後、地元のテレビ局に就職し、番組制作に携わっていました」と語る。ところが、5年2か月後にテレビ局を退職し、米国のビジネススクールへの留学を決意する。理由は、「新しいことに挑戦したくなったから」だ。「テレビ局では番組制作のほか、報道なども担当し、やりたかったことは一通り、もうやり終えたかな、という思いもあったんです」米国でビジネスについて学び、帰国後、2005年、ウォルト・ディズニー・テレビジョン・インターナショナル・ジャパンに入社。翌年、20世紀フォックス映画へ入社する。ここで、日本を始め世界で大ヒットしたハリウッドの重鎮、ジェームズ・キャメロン監督のSF大作『アバター』の興行を手掛けたのだが、こんな秘話を明かしてくれた。29
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