だし、十分、身体も動く。もう一度、この舞台をやってみたい」。休んでいる間に、突然、そんな衝動が沸き起こってきたという。その衝動とは、「女優として、もう一度、あの恋を生きたい」という抑えきれない感情だった。十朱が語る〝あの恋〟を描く舞台のタイトルは『燃えよ剣 土方歳三に愛された女、お雪』。作家、司馬遼太郎の人気小説『燃えよ剣』が原作だ。2013年に初演し、2021年まで計45回上演を重ねてきた十朱の一人舞台である。盟友と作りあげる舞台激動の幕末期。鬼神のような新選組の副隊長、土方歳三が、純情一途に愛した、たった一人の女性、お雪を十朱が演じる。初演から脚本、演出を担当してきた演劇界の重鎮、笹部博司に連絡し、「また、この舞台を演じたい」と十朱は素直に思いを伝えた。このときのいきさつを笹部に聞くと、「十朱さんはとても飽きっぽい女優で、これまで一度演じたものは二度とやりたいとは言わなかった。再演も好きではありませんし」と明かした後、うれしそうにこう続けた。「その十朱さんが、もう一度、お雪をやりたい。そう言ってきたんですよ」音楽、ピアノ演奏を担当するのは、こちらも初演以来の十朱の盟友、音楽家の宮川彬良。「舞台に上がるのは十朱さんと宮川さんの二人だけ。稽古中、私は演出をしますが、22
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