クセですね。毎日ごはんを食べるのと同じです。ごはんを食べないと死んでしまうように、日記を書かないと死んでしまうのです。日記病という慢性病です。こうなると、今度は書き続けることより止める方が難しくなってくるのです。僕が日記を書くのは義務ではありません。義務になるとプレッシャーになって苦しいのです。だからごはんのように生活習慣、死なないための生活習慣です。さっきも言いましたが、クセです。なくて七癖のクセです。日記は誰かのために書くわけではないです。まぁ自分のためですかね。だから上手に書く必要も全くないです。とにかくごはんを止めると死にますから、日いう気持ちは、誰にもあるように思います。今年こそ書くぞ、と年末に文房具店で日記帳を買っても、正月だけの三日坊主で、なかなか続きません。僕も毎年のように正月に志を立てるのですが、なかなか実行できません。なぜですかね。現在僕は、1970年から毎日書いているので、55年間書いていることになります。毎年同じ日記帳を使用しているのですが、そんな日記が55冊並んでいます。1970年の1月だったかに、交通事故に遭って入院するのですが、この機会に闘病日記でも、と思って書き始めたのが、日記という病気に病みついてしまったのです。習慣というより、もう日記『昨日、今日、明日、明後日、明々後日、弥の明後日』という長ったらしい題名の本を出したところ、編集の田中奈都子さんから、「では次号は日記について書いてくれませんか」というリクエストがありました。この本は分厚い本ですが、買っていただいた人の大半が、一気に読んだというので驚いています。まぁ1日の文章量が少ないので、つい、明日も、明後日も、と次々と日を追って読んでいただいているように思います。田中さんは「毎日書かなくちゃいけない」とか「面倒なもの」とか「上手く書かなくちゃいけない」とか妙な強迫観念で、どうも腰が重いようですね。確かに、日記を書いてみたいとTadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:横浪 修神戸で始まって 神戸で終る 日記との付き合いかた16
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