KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年7月号
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瀬戸内で育まれた創作の源手掛けた歌詞は5000曲以上。和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」や尾崎紀世彦の「また逢う日まで」、ピンク・レディーの「UFO」など数々のヒット曲の詞を生み出した作詞家、小説家の阿久悠(1937~2007年)は兵庫県の淡路島で生まれ、育った。彼が残した数多くの歌の詞や小説のなかに故郷・淡路島や、その対岸にある憧れの地、神戸への郷愁の思いが綴られている。1937年、阿久は現在の洲本市五色町(当時、鮎原村)で生まれた。父は警察官で異動が多く、一家は島内を転々とし、阿久は洲本市立都志小学校を卒業する。海に面した自然豊かな都志は、江戸時代後期、北海道の国後、択捉間の回路を開拓した海商、高田屋嘉兵衛の出身地としても知られる地だ。阿久は兵庫県立洲本高校を卒業後、上京し、明治大学文学部へ進む。大学卒業後は広告代理店へ就職。コピーライターやCM制作、構成作家などとして活躍していた。阿久悠というペンネームの由来は〝悪友〟から。兼業禁止だった広告代理店の勤務時代に考えついた名前で「途中で変えようと思った」と言うが、作詞家となって独立後も、そのまま通した。作詞家として軌道に乗った阿久の快進撃はすさまじく、歌謡界を席捲する。1977年6月20日、阿久が作詞した沢田研二の「勝手にしやがれ」(大野克夫作曲)がオリコン・シングルチャートで1位を獲得。以後、12月5日にトップに輝いた阿久作詞、戸倉俊一作曲のピンク・レディーの「ウォンテッド(指名手配)」まで25週にわたり、彼の作詞した曲が連続して1位を獲るというヒットメーカーぶりを世に示した。この12月5日のオリコン・シングルチャートではベスト100曲中、実に16曲が阿久が手掛けた曲で占められた。興味深いのは1位、ピンク・レディーの「ウォンテッド」、2位、沢田研二の「憎みきれないろくでなし」の他、岩崎宏美の「思秋期」、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」、ささきいさおの「宇宙戦艦ヤマト」など、歌のジャンルが、ポップスに演歌、アニメ主題歌など多岐にわたっているところだ。生涯5000曲以上を作詞し、歴代作詞家のシングル売上枚数では秋元康に次いで2位。この記録は破られることはないだろう。被災者へのメッセージ生まれ故郷である淡路島沖合いが震源地となった阪神・淡路大震災の被災者への思いも、彼は神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~前編阿久悠希望を歌詞に込め…不変の故郷への思い118

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