前回は「失われた質量」の話をしました。これは、天体の輝きから求められる質量と、天体の動きから求められる質量との間に、大きな差がある、という問題でした。今回は、銀河の中について、この問題を詳しく見てみましょう。前回でも、そして第11回でもお話した通り、天体の運動の様子は、それにかかる重力で決まっています。重力が強いほど、それに引っ張られて落ちてしまわないよう、速く動く必要があります。重力の大きさは、距離の二乗に比例するので、重力を生み出している物体に近いほど速く、遠いほど遅く、天体は動くのです。前回はそれを、われわれの太陽系の惑星、水星と冥王星を例にとってお話しました。これは、太陽系の質量が「太陽一極集中」だからこそ起こる現象です。いっぽう銀河のほうは、その明るさから考えると、中心にあるバルジに恒星が集中しているので、やはり太陽系と似たような速度分布になることが考えられます。図の左側は、明るさから考えた通りに質量が分布していた場合の、銀河の多田先生!素粒子物理学者の 宇宙物理学教室教えて 連載〜第24回〜 銀河の中の暗黒物質自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。今月号から、謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!56
元のページ ../index.html#56