KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年6月号
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ある日、この教室にMV(ミュージック・ビデオ)のキャステング・ディレクターがやって来た。出演者数人を選ぶためだった。ウサーは、そこで見いだされ、MVやテレビCMなどに次々と出演する。『おばあちゃんと僕の約束』は、世界で大ヒットした映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年)などを手掛けてきたタイ屈指の映画会社「GDH559」の新作として製作された。〝ヒットメーカー〟の新作に注目が集まる中、その作品の根幹を握るメンジュ役の配役は難航、100人以上のオーディションを経ても、まだ決まっていなかった。「ある日、突然、電話がかかって来たんです。メンジュ役の出演依頼でした」MVのなかで演じるウサーのシーンを見たパット・ブーンニティパット監督たち製作陣からのオファーだった。そして、彼女の〝第二の人生〟が幕を開ける。■家族の愛は国境を越えて「演技経験が少ないから、私はその役に成りきるのです」俳優としての覚悟を問うとウサーは謙遜しながらも力強くこう答えた。今作で長男役として共演したベテラン俳優、サンヤー・クナーコンはこう語っている。「ウサーの全身全霊の演技は、まさにプロ。プロの俳優の演技でした」と。ロングインタビュー終了後、本誌の編集者と互いに両手を合わせ「コップクン・カー(ありがとうございました)」と言葉を交わし、抱き合って別れの挨拶をするウサーの姿を隣で長女がうれしそうに見つめていた。両目に涙を浮かべながら…。〝国民のおばあちゃん〟の優しさは国境を越え、その包容力、愛情は普遍だと実感させられた瞬間だった。この映画を見た後、人生観が間違いなく変化する―。そんな、ウサーが全身全霊でメンジュに命を吹き込んだタイ屈指の傑作がまもなく日本公開される。文=戸津井康之■作品情報監督・脚本:パット・ブーンニティパット脚本:トッサポン・ティップティンナコーン出演:プッティポン・アッサラッタナクン(ビルキン)、ウサー・セームカムサンヤー・クナーコン、サリンラット・トーマス原題:LahnMah日本語字幕:小河恵理後援:タイ国政府観光庁配給:アンプラグド©2024GDH559CO.,LTD.ALLRIGHTSRESERVED公式サイト:https://unpfilm.com/lahnmah/6月13日(金)、シネ・リーブル神戸ほか全国公開!公式サイト33

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