あれば発症しているひとつの区域を切除して可能な限りの肺機能を残しながら根治を目指します。―少し進行した癌でも手術ができるのですか。術前治療を行うことで腫瘍を小さくしてから手術でとるという方法が盛んに行われるようになってきています。その理由のひとつには免疫療法の登場が挙げられます。癌細胞は攻撃をしてくる抗体から自身を守る盾のようなものを持っています。免疫療法でこの盾を取り除くと、患者さんご自身の免疫力によって癌をある程度小さくすることが可能です。免疫療法は主にⅣ期の患者さんで再発した方に限り保険集載されていましたが、昨年から、術前の患者さん対象の治療にも保険が適用されました。免疫療法を含む術前療法を行って、腫瘍を小さくしてから手術を行うことで、とる肺の範囲を少なくして肺機能を温存する手術方法も今後確立されることが予想されます。―どの段階のどんな癌でも低侵襲の手術が行われているのですか。神大病院では低侵襲手術が99パーセント、中でもロボット支援手術では全国有数の実績を持ちます。呼吸器外科手術に関しては保険適用になっている肺の悪性および良性腫瘍、胸郭腫瘍の手術においてロボット支援内視鏡手術が行われています。最近はロボットの縫合技術が向上しており、気管支や血管の形成手術が同時に必要なケースでもロボット支援下で可能になりました。―神大病院では肺や縦郭の腫瘍の他にも、難しい手術が行われているのですか。希少な疾患ですが自己免疫疾患を誘発する胸腺腫、胸壁にできる悪性肉腫、若い方で肺に穴が開く自然気胸、高齢の方に多い間質性肺炎や肺気腫によって肺に穴が開き高度な治療が必要な続発性気胸、肺炎の炎症が波及して胸腔に膿が溜まる膿胸などがあります。これらの手術も胸腔鏡手術が主ですから、呼吸器外科で開胸手術が行われるのは年間1%程度です。―術後の回復が早いのですね。回復力は明らかに違い、術後補助療法を受ける体力が温存できている患者さんの割合を比べると、開胸手術より低侵襲手術のほうが格段に高く、しかも多くの患者さんが完遂されます。さらに低侵襲な「単孔式手術」も始まっています。胸腔鏡手術では切開部分は3~4カ所、ロボット支援下では5カ所必要で、そこからカメラや鉗子などの器具を入れ動かします。これを1カ所にまとめて傷をさらに小さくし、患者さんの負担を軽減しようというものです。―治療には他科の先生方との協力・連携が必要ですね。手術と化学療法、放射線療法、免疫療法を合わせた集学的医療が主流ですので、診断から術前・術後まで途切れることのない治療を患者さんに提供するにあたって、他科の先生方との協力は不可欠です。呼吸器内科・外科、放射線科、病理で100
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