■日本での映画修業の成果 こう振り返るイ監督の経歴も異色だ。韓国の大学を卒業後、出版社で勤務後、日本で映画を学ぶために、今村昌平監督が創設した日本映画大学(元日本映画学校)に留学。今村監督や天願大介監督(今村昌平の長男)など日本の名匠たちから映画製作の技術を習得した。「韓国の出版社にいた頃、日本の映画雑誌『キネマ旬報』との共同企画があり、そのときに石井聰互監督(現・石井岳龍)と知り合い、日本映画大学を紹介してもらったんです」日本で〝映画修業〟したイ監督は、卒業後、日本の映画現場で働く。ハリウッドの重鎮、マイケル・マン監督による東京を舞台にした世界配信の日米共同制作ドラマ『TOKYO VICE』(2022~2024年)のロケーション・プロデューサーや、三池崇史監督による韓国ドラマ『コネクト』(2022年)では助監督を務めた。また、中山美穂の久々の主演映画として話題を呼んだ日韓合作の映画『蝶の眠り』(2018年)ではライン・プロデューサーを務めるなど長年、日韓映画界の懸け橋的存在として活動してきた。新作の予定を聞くと、「まだ、詳しくは言えませんが、初めてホラー映画に挑戦します」とイ監督は教えてくれ、こう続けた。「日本と同様、韓国も少子化が進んでいます。将来は、日韓が協力しあいながら共同で映画を製作する機会は必ず増えてくると思います。今回の映画が、そのいいきっかけとなれば」両国の映画製作現場を知るイ監督へかかる期待は大きい。高野さんは「実は、昨年のプチョンでの映画祭に、韓国の出版社の方が私に会いに来てくれて、『韓国で新刊を出しませんか?』と依頼されたんです。今年6月、韓国で初の短編集を刊行することが決まりました」と声を弾ませ〝ビッグ・ニュース〟を教えてくれた。日韓の才能がタッグを組んで生み出す〝メディア・ミックス〟の新たな潮流が、未来の文化・芸術の国際交流の可能性の広がりを予感させる。文=戸津井康之イ監督(左)と入念な打ち合わせをするジェヒョン。日韓で人気のアイドルだが今作が映画初主演■作品情報原作:高野和明『6 時間後に君は死ぬ』(講談社文庫)監督:イ・ユンソク出演:チョン・ジェヒョン(NCT)、パク・ジュヒョン、クァク・シヤン原題 :6 시간 후 너는 죽는다英題:YOU WILL DIE IN 6 HOURS字幕翻訳:石井絹香配給:クロックワークス©2024, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED公式サイト:https://klockworx.com/die6hours5月16日(金)テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー!公式サイト83
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