KOBECCO(月刊神戸っ子2025年5月号)
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な立場で関われるかは、まだ分かりませんが…」。そう希望を語りながらも、「数年先まで新作のスケジュールは埋まっています」と言う。まだまだ創作活動から離れるつもりはない。「私の子供時代?おとなしい子で先生からあまり気にされていなかったのでは…」と語ると、「だから私は生徒の誰一人、寂しい思いをさせない先生になりたかった」と教職を目指した理由を教えてくれた。人は誰かに愛情を注ぎ、注がれ、支えあいながら生きていく。「血のつながりはそんなに関係ないと思います」。この言葉はこれまでの小説のなかでも貫かれてきた。教師として、そして母として培った経験が、これからどんな形で小説のなかに投影されていくのだろうか…。新作は、「痛みや苦しさを伴いながらも、私にとって〝幸せと未来の塊〟とも言える大切な作品です」と語る。美空とひかり―。二人の名は、明るい未来と希望を抱かせてくれる。希望の〝ひかり〟大阪市で生まれ、幼少期を兵庫県宝塚市など関西で過ごした。2001年、『卵の緒』で坊ちゃん文学賞大賞を受賞。翌年、作家デビューを果たすが、「幼いころの夢は学校の先生でした」と話すように、作家となる前に中学校の国語講師を経て、2005年から2011年まで京都府内で中学校の国語教師として勤務した。現在は奈良市で子育てをしながら作家に専念し、小説を執筆している。「〝これは私の話だね〟。そう長女が横から原稿を覗き込みながら聞くので、〝そうだよ〟と答えました」絵本以外で長女が読む小説の〝読書デビュー作〟は母が書いたこの『ありか』になる予定という。娘を思って語る母の優しい表情は誇らしげでもあった。今後の抱負を聞くと、「子育てが一段落したら、また、教育現場に復帰してみたい。どん『ありか』 母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。義弟の颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするが―。1,980円(税込) 水鈴社24

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