を出したんです」と語った。前田監督のラブコールを受け、瀬尾は「とても熱心なお手紙でうれしかったです」とすぐに映画化を了承したという。2007年に公開された北乃きい主演の『幸福な食卓』をはじめ、加藤ローサ主演の『天国はまだ遠く』(2008年)、中島裕翔、新木優子の共演作『僕らのごはんは明日で待ってる』(2017年)、そして昨年公開された松村北斗、上白石萌音W主演の話題作『夜明けのすべて』など、発表する小説が相次いで映画化されている。それも〝旬〟な俳優たちがこぞって出演している。「映画は好きです。実は『夜明けのすべて』には娘と一緒に出演しました。ほんの一瞬ですが」とうれしそうに教えてくれた。映画監督やプロデューサー、俳優陣…。活字で描き上げる瀬尾作品の世界観に魅了される映像の作り手は少なくない。場合の「もしも」を考えて、どんな未来にたどりつけていたかを想像する……》美空が抱く「もしも…」は、この世に生を受けた万人に無縁ではないだろう。映像化が相次ぐ理由2019年、本屋大賞を受賞し、2021年に映画化されたベストセラー小説『そして、バトンは渡された』も〝新しい家族像〟が描かれていた。3人の父と2人の母の下で育つ〝数奇な運命〟を背負いながらも健けなげ気に生きる女子高生、森宮優子が主人公。「たとえ、血がつながっていなくても、人間は多くの人に支えられ、助けられながら成長していく。そんな姿を描きたかった」映画では、逞しく生きるヒロインを女優、永野芽郁が熱演した。映画の公開前、筆者は前田哲監督を取材した。映画化のきっかけを問うと、前田監督は「小説を読んで感動し、すぐに瀬尾さんに手紙自分の子どもの頃を振り返り、母との関係に悩む美空の本音が赤裸々に吐露される。また一方で、離婚した夫とはほとんど連絡も取り合わないが、義理の弟、颯斗は母子の生活を気遣ってくれる。たとえ、遠い親戚であっても、あるいは血縁関係がなくても、人は助け合うことができる新時代の人間関係の在り方、家族の在り方を提示し、現代人に問いかけてくるようだ。「それぞれ、モデルはいますよ」と創作の背景、構想のヒントを明かしてくれた。読む者は、シリアスな展開に胸をしめつけられるかもしれないが〝実生活〟の心配はご無用のようである。「夫と娘と家族三人、仲はいいですよ。長女は、パパではなくママ、ママとしか言いませんが」と笑顔で語る。《……頭の中でいろいろと考える。もしも結婚しなかったら、もしも離婚しなかったら……。それから遡って、大学に行っていたら、なりたい仕事についていたら、自分が恵まれた家の子どもだったらと。いろんな23
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