THESTORYBEGINS-vol.54■作家■瀬尾 まいこさんさった方の何かを掬すくってくれるものが、この物語のなかにあれば、幸せです」の言葉のなかには、人それぞれの〝ありか〟を見つけてほしいという願いが強く込められていることも分かる。デビュー作から一貫して作品のなかへ込めてきたテーマ。その根源は揺るがない。母との関係に悩みながら一人娘のひかりに愛情を注ぐシングルマザー、26歳の美空が主人公。他に登場人物は夫と離婚後も、美空とひかりの生活 新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。 第54回は、発表する小説が次々と映画化やドラマ化される人気のベストセラー作家、瀬尾まいこの登場です。〝ヒット作誕生の方程式〟はあるのだろうか。自分自身をここまで物語に描くのは初めて…私のすべてはここにある⊘ 物語が始まる ⊘続けてきた。水鈴社から発刊されたばかりの新作のタイトルは『ありか』。「書いている途中で、このタイトルが思い浮かびました。これしかない…と。これまでの私の人生をすべて、この作品に込めました」と瀬尾まいこは熱く語る。居場所はここにある―。そんな覚悟を込めた一作であることがタイトルからも伺える。続けて語った「読んでくだ〝集大成〟の新作「私の小説を読んでくれる人たちが、少しでも気持ちが楽になったり、楽しんでもらえたら…」鋭い人物描写で、善悪の両面を合わせ持つ人の心の内面を奥底まで掘り下げていく一方で、人と人との温かい心の触れ合いや、助け会う無償の愛の素晴らしさを訴える…。そんな細やかで優しく、かつ力強い人間賛歌を小説のなかで描き文・戸津井 康之撮影・服部プロセス20
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