KOBECCO(月刊神戸っ子2025年5月号)
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少人数であるか。そういうことへの自覚の欠如ではないでしょうか。まあ、今回の「肉体派宣言」展は、学芸員の思考と肉体の間で揺れながら、かなり、説得力のある展覧会へと導いてくれたと思います。ある意味で、展覧会は学芸員の戦いのコラボレーションかもしれません。そういう意味では、時間内ギリギリで自分の限界をどこか事なかれ主義で、その日がなんとか終わればいいという考えに支配された日常です。何も自己をそこまで見極める必要などないという、事なかれ主義が、空気としてこの社会に蔓延してしまっているように思います。自分に与えられた全ての仕事は、自己の魂の向上のための修行であり機会であると考えている者が、如何に横尾忠則現代美術館美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。『横尾忠則の肉体派宣言展』が始まります!2025年5月24日(土)~8月24日(日)越えようとする姿勢にも見えています。ベテランの学芸員が、これから冒険しようとして難解な課題を自らに与えて苦悶する姿勢は、時には感動的です。そのような学芸員の苦悶を念頭において、この「肉体派宣言」の展覧会をご覧になっていただきたく希望しています。横尾忠則《切断の図》2021年19

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