KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年4月号
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の働きや心の受け止め方も変化します。小児外科医は手術がこどもたちのその後の人生に良い結果をもたらしているのかをフォローアップするという責任を負っていると考えています。「学校生活はうまくいっているか」「ちゃんと走れているか」など生活に気を配り、困りごとの相談にのるようにします。例えば、鎖肛の手術をしたこどもが成長するにつれて、排便の悩みについて誰にも相談できずにいるかもしれません。その子の肛門の手術や臓器の働きのことを理解しているのは小児外科医です。小児外科の診療対象の基本は15歳までですが、年齢に達したからといってすぐに「大人の診療科に移ってください」というわけにはいかないのです。―大人の診療科への移行については何か取り組みを進めておられるのですか。移行期医療は小児医療全般において大きな課題です。国の事業で、厚生労働省が移行期医療支援センターの設置を推―手術にはロボットも導入されているのですか。ロボット支援手術の小児外科への導入は、世界的にこれからの課題となっています。神戸大学病院はロボット支援手術において先進的な環境があり、小児外科では准教授の先生を筆頭にチームをあげてロボット支援手術の検証や臨床に取り組んでいます。ロボットの鉗子先端部の細かい動きはこどもの小さな体の中で安全に操作するのに適していると思います。機械が行う手術ですから絶対的に安全を優先して進めなくてはいけません。安全性を第一に考えて実績を重ね、小児外科手術に手術支援ロボットを導入して利点を生かしてこどもたちを診療していけるよう、全国に先駆けて進めているところです。―先天異常などの大きな手術後は15歳まで小児外科で経過を見続けるのですか。小児の場合は体が成長していく段階で手術をします。手術を受けた体は成長し、臓器進し、現在11の都道府県に開設されています。兵庫県では、県の委託を受け2022年5月1日に神大病院に開設され、センター長を拝命しました。心臓や血液の病気、糖尿病などでは移行期医療がスムーズに行われている一方で、その他の領域では十分とは言えず、多くの患者さんや親御さんや医療者が困っておられます。センターの役割のひとつは、移行期医療をもっと知って問題意識をもってもらう啓蒙活動です。勉強会や研修会、講演活動、送り出す側の小児診療科と受け入れ側の成人診療科の医師が集まって話し合いの場を持つ、などの活動を行っています。また、移行期の患者さんの困りごとや医療者からの問い合わせに対応する相談窓口を作っています。さらに、広い兵庫県では地域によって医療事情が異なるので、移行期医療について地域ごとの現状を把握して課題解決へ導こうと、県内の全ての医療機関に対してアンケート調査を実施しています。82

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