ストーリーやことばから、桃太郎の物語を掘り下げる田辺先生神戸を代表する名門ホテル、ポートピアホテルの文化教室、サロン・ド・ポートピアが人気だが、2月15日には兵庫・神戸のヒストリアンこと田辺眞人の知っとこレクチャーが開催された。今回のテーマは桃の節句にちなんで「桃太郎の文化」。おなじみの物語、桃太郎をテーマに、講演とランチを愉しむ会となった。お話はまず、民話という切り本質的な意味が合致していないという。〝おに〟は想像上の抽象的存在で「大きな人間」「力が強い」という本質的な意味が。一方の〝鬼〟という漢字は悪い死霊のことを指し、「鬼門とは悪い死霊がやって来る方向。中国では鬼門に桃を植えると良いと言われています」と田辺先生。そして「中国で〝桃〟はその形から女性のおしりを想像し、生命を生み出し死に打ち勝つ力があると考えられていました。ですからイザナギが桃の実を投げて死人の世界から戻るという『古事記』のお話は、中国の思想が8世紀には伝播していた痕跡と考えることもできるのです」と続け、中国文化が生んだ「鬼」と日本文化の「おに」との関係に、参加者は興味深く聴き入っていた。レクチャー後のランチでは岸本貴彦総料理長がひなまつりや桃太郎にちなんだメニューを解田辺眞人の知っとこレクチャー 『桃太郎の文化』ポートピアホテルひょうご神戸まちかど学だよりサロン・ド・ポートピア口から。民話には言い方の形式が自由で話の内容が固定されている昔話と、形式が固定され内容が自由の伝説に分類されるが、「昔話は土着化して伝説化し、伝説は全国化して昔話化するんです」と、桃太郎と浦島太郎を例にわかりやすく解説。桃太郎はもともとも「どこで」という言及がない昔話だが、いまはすっかり岡山に根付いている。その根拠はきび(黍~吉備)だんご、鬼ノ城の存在、桃の産地という地理的条件が当てはまることだが、まさに桃太郎は物語が土着化して伝説となった好例だと田辺先生は指摘した。続いては言語比較文化の視点からの分析。文字を持たなかった日本人が、大陸からやって来た漢字にことばを当てはめ〝もも〟が〝桃〟に、〝おに〟が〝鬼〟となったが、抽象的存在、特に精神文化にまつわることは72
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