そして、第18回では、観測事実として、宇宙は平坦であること、第21回では、インフレイションによって必然的に臨界密度ぴったりになることをお話ししました。ということは、宇宙の未来は、この、「彼方に飛んでいくわけではないが、落ちてくるわけでもない」状態となるのでしょうか。20世紀まではそう思われていました。ところが、21世紀になって、驚くべき観測結果がもたらされました。宇宙はそんな単純な進化をしておらず、なんと、宇宙の膨張速度は、遅くなっていくどころか、加速されて速くなっていっている、というのです!今回お話ししたどの場合でも、膨張速度自体は遅くなっていきます。永遠の時が経っても速度が0にはならない場合でも、最初の頃より速度が遅くなっていっていることに変わりはありません。なぜなら、互いに引き合う重力しか働かないからです。となると、膨張が加速しているという事実から、重力とは別の、あるエネルギーの質量を空間の広さで割った、「質量の密度」です。この質量密度が大きい(重い)場合は、重力が勝って、宇宙は「落ちてくる」、つまり、今は膨張しているが、未来のある時点で膨張速度が0になり、そのあとは収縮に転じます。最後は宇宙はまた一箇所に集まってしまいます。これを「ビッグクランチ」と呼びます。宇宙の質量密度が小さい(軽い)場合は、宇宙は重力に勝って永久に膨張を続けます。永遠の時間が経っても、膨張速度は0にはなりません。そして、人工衛星のように、「ちょうどよい」バランスの場合は、永遠の時間が経つと膨張が止まる、しかし宇宙は収縮しない、つまり、「彼方に飛んでいくわけではないが、落ちてくるわけでもない」状態となります。このときの質量密度を、「臨界密度」と呼びます。この連載をよく読んでくださっている方なら、目にされたことがあるはずです。そう、第18回でお話しした、「宇宙が平坦となる密度」のことです。ちてきます。それは、重力の大きさに比べて、投げ上げる速度が小さすぎるからです。もっと速い、たとえばロケットの打ち上げ速度くらいだとどうでしょうか。ロケットが打ち上げる人工衛星は、落ちてこないですよね。要は、投げ上げる速度と、重力の大きさ、あるいはボールの重さとのバランスによって、ボールの「未来」が決まるのです。ボールが重い、あるいは投げ上げる速度が小さい場合には、ボールはやがて落ちてきます。ボールが軽い、あるいは投げ上げる速度が大きい場合には、ボールは重力を振りきって宇宙の彼方へと飛んでいきます。月や地球以外の惑星、あるいは太陽系外を目指す宇宙船のように、です。そしてその中間、ボールの重さが、投げ上げる速度と絶妙のバランスである場合には、ボールは地球の周回軌道を回ります。これが人工衛星です。では宇宙の「未来」はどうでしょうか。重力の大きさを決めるのは、宇宙にある物質53
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