第15回から第21回まで、宇宙年表に従って、宇宙を現代から過去に遡っていきました。それでは逆に宇宙の未来はどうなるのでしょうか。今回はそれについてお話しします。第12回で、宇宙に大規模に働く力は引き合う方向にしか働かない重力だけなのに、なぜ、宇宙は膨張する方向に広がっているのか、という話をしました。そのときは、重力に逆らって上向きにボールを投げ上げることにたとえました。つまり、ボールには下向きの重力が働いているので、ボールを投げ上げたときに、最初は上向きの速度をもっているので上がっていく、しかしあるところで速度が0になり、そのあとは重力の方向に落ちていく、我々は今、その「最初」のとき、「未だ上向きの速度が0になっていない瞬間」を見ているだけだ、ということでした。それでは宇宙も、いつかは膨張速度が0になり、そのあとは「落ちてくる」、つまり収縮していくのでしょうか。我々人間があらん限りの力でボールを投げ上げたとしても、それはいつかはかならず落多田先生!素粒子物理学者の 宇宙物理学教室教えて 連載〜第22回〜 宇宙の未来自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。今月号から、謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!52
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