パウル・クレー《北方のフローラのハーモニー》 1927年 パウル・クレー・センター(リヴィア・クレー寄贈品)パウル・クレー《蛾の踊り》 1923年 愛知県美術館《チュニスの赤い家と黄色い家》では、右上の樹木のモティーフなどを具象的にとらえているにもかかわらず、水彩絵の具による透明な色面が重なり合うことで、クレー独自の絵画世界が立ち現れています。1923年に描かれた《蛾の踊り》では、同じ頃にバウハウスで教鞭をとることによって形成されたクレーの造形論がかいま見られます。グリッドによる色彩のグラデーションが施され、あたかも画面にスポットライトが当てられたかのような効果の中、矢印に象徴される下向きの重力に抗い上へと飛翔する擬人化された蛾のモティーフが表現されています。《北方のフローラのハーモニー》では、垂直と水平の強調されたグリッドがピート・モンドリアンらによる「デ・ステイル」の作品を彷彿とさせますが、点対称に厳格に配置された色彩は彼独自のもので、クレーはこうした構成的な作品にローマ神話の花と春の女神の名を与えるのです。同時代の美術の動向と接点を持ちつつも、それとは別の造形言語を紡ぎ出すクレーの諸作品を、その他の作家の作品や資料とあわせてどうぞご堪能ください。(学芸員・相良周作)■神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1■TEL.078-262-1011■休館日:月曜(祝日・振休の場合は翌日)■開館時間:10:00-18:00(展示室への入室は17:30まで)兵庫県立美術館HYOGO PREFECTURAL MUSEUM OF ARTパウル・クレー展創造をめぐる星座兵庫県立美術館 企画展示室■2025年3月29日(土)~ 5月25日(日)13
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