近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。ライトペディアWrightpediaChapter 11前回ご紹介した帝国ホテル2代目本館の個性を際立たせている素材、大谷石は、栃木県の県都、宇都宮市の大谷地区(建設当時は河内郡城山村)を中心に産出される岩石です。火山が噴出した火山灰が海底に堆積・凝固してできた流紋岩質の凝灰岩ですが、海なし県から出てくるのが面白いところですね。凝灰岩の産地は全国にありますが、大谷石の採掘は世界的にも大規模なもので、一説によればフランク・ロイド・ライトが素材に選んだ理由がこの点にもあるとか。周囲の環境と溶け込む有機的建築を標榜するライトは、日本では日本の素材を用いようと全国の石材を比較検討、最初に島根県産の蜂の巣石に着眼します。しかし産出量が少ないため断念し、似たような岩質で十分な量を確保できる大谷石に白羽の矢が。そして短期間に大量の石材を確保するため、帝国ホテルでは石の山をまるごと購入して対応しました。余談ですが、タイルも同様の理由で愛知県の常滑に直営工場を設けます。そして竣工後に帝国ホテルから譲渡され伊奈製陶所となり、これが現在のINAXのルーツだとか。私たちが普段お世話になっているトイレも、実はライトと繋がっているのです。やわらかく加工しやすい大谷石は、高い技術を持つ日本人の石匠たちにより多彩な彫刻が施されます。もちろんそのデザインはライトによるもので、一定の秩序により統一感を演出しながら、青みがかった白の色合いや素朴な質感も生かして、さまざまな場所の装飾に使用されました。中でも玄関ホールの柱の大谷石には金彩が施され、陽光が差すと燦めきつつ、床に幾何学模様の影を落として幻想的なムードを醸したそうです。 大谷石 120
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