スイスを代表する美術家、パウル・クレーは、その独創的な画風から、生前より高い評価を受け、現在では20世紀前半に活躍した最も重要な美術家のひとりとみなされています。これまで、日本国内においても重要なクレーの回顧展が数多く開催されてきましたが、それら従来の展覧会において、彼が活躍した20世紀前半の美術動向や同時代に活躍したその他の作家との交流関係に限定すれば、必ずしも詳細な研究に基づき、内容の展開を充実させるまでには至っていませんでした。このたび兵庫県立美術館で開催する「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」では、クレーの故郷であるスイスのベルンに所在のパウル・クレー・センターとの学術的な協力のもと、キュビスム、表現主義、ダダ、シュルレアリスムといった、クレーと同じ時代の美術の動向にも目を向け、その他の作家の作品とあわせて展示することで、クレーの独自性にとどまらずその同時代性や交流などにも焦点を合わせます。1914年に北アフリカのチュニジアを訪れたことを契機に、クレーの色彩は鮮やかになりました。パウル・クレー《チュニスの赤い家と黄色い家》 1914年 パウル・クレー・センターけんびの『美』連載vol.5クレーの個性と同時代性12
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