軟水から硬水まで、バリエーションに富んだまち背後に六甲山系をひかえ、海と山が近い神戸は世界でも稀有な地形環境です。300万年前からフィリピン海プレートが北西方向へ斜めに沈み込んだ影響で、六甲山系が隆起し、大阪湾は沈降しました。その結果、神戸の水は山系から平野部へ流れ落ちてきます。カルシウムやマグネシウムに乏しい花崗岩でできた山沿いでは軟水が湧き、平野部の地層の中を流れると粘土層に含まれる貝殻からカルシウムやリンを溶かし込み、海水の塩素の影響も受けた中硬水、硬水になります。続いて、軟水・硬水と料理の関係をお話しします。日本の出汁は昆布出汁が重要で、軟水は昆布のグルタミン酸を効果的に抽出します。一方、獣の肉から取るフレンチなど洋食の出汁は、硬水を使うと臭みの元になるたんぱく質と反応して灰汁ができます。取り除くと臭みは消え、旨味成分イノシン酸が神戸の特殊な地形と水が生み出す食と灘の酒のマリアージュ神戸大学名誉教授である巽好幸さんは、地質学の観点から食文化を紐解く「美食地質学」を提唱。今回のモニターツアーでは、神戸の水と食、そして灘五郷の酒について、地質学の観点から巽さんが講演を行った。神戸大学名誉教授ジオリブ研究所所長巽 好幸さん38
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