KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年3月号
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近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。ライトペディアWrightpediaChapter 10帝国ホテルの2代目本館は、フランク・ロイド・ライトがはじめて手がけたホテル建築にして日本で最初の作品で、寺院のような荘厳さと宮殿のような壮麗さから「東洋の宝石」との異名をほしいままにしました。どこか日本的だと感じるのは、建物の構成にも理由がありそうです。パブリックスペースを集約した中央棟の左右に客室棟がシンメトリックに配置され、それを渡り廊下で繋いでいますが、その組み立てはまるで寝殿造り、あるいはそれをヒントに建てられた平等院鳳凰堂のようです。建物と建物の間は、都心にありながらやすらぎの雰囲気を醸し出す中庭で、屋内の採光や開放感にも寄与しています。工法は当時の最新のもので、当時まだ少なかった鉄筋コンクリート(RC)造を採用。短い杭の上にRCの土台を置く浮き基礎や、全体を10のブロックに分割しジョイントで繋ぐという方法で柔軟性を持たせて軟弱地盤に対応しましたが、このアイデアは思わぬ形で奏功します。なんとまさにオープン当日の1923年9月1日に関東大震災が発生、周囲の建物が倒壊し炎上する中で、柔軟性が地震の力を逃したのかほとんど無傷で、大地震に耐えたことでライトの名声はさらに高まりました。装飾には大谷石やタイルをふんだんに使用。その幾何学的な造形がエキゾチックな雰囲気を演出し、ライトお得意の空間の抑揚と相まって神秘的なムードに。照明や家具、調度品に至るまで精緻にデザインされ、ライトの哲学が随所にうかがえます。宴会場は孔雀の見事な大壁画があったそうです。1969年に残念ながらその役目を終えて解体されましたが、玄関・ロビー部分とその正 帝国ホテル 144

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