KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年2月号
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いことがいやなので、自主的に行動を起こすより、向こうからやってきたものにまかせた方が便利がいいんじゃないかと、ただそれだけのことである。欲望に従って積極的に生きるよりも、むしろ受け身になって、それに従った方が必要以上の自我意識に振り廻されないで、逆に、どこに連れ出されるのかわからない他動性に従う方が、未知への期待や冒険が待っている。その方が自分の想像力を遥かに超えて、とんでもない地点に運ばれていく。だけど、そのような他人まかせというか運命まかせに対「ヘェーッ!?」と最初は思ったが、企画内容の説明を受けていると、「なるほど」に変わってきた。山本さんが言うには、僕の波乱万丈の人生を作品によって再構成しているものだが、無事「あがり」にたどり着けるかどうかは運まかせ。なるがままに運命を受け入れてきた横尾の生き方さながらに、楽しく遊びながらその作品に親しむことができる、「前代未聞の企画展」だそうである。僕は別に波乱万丈の人生を生きてきたとは思わないが、山本さんが言うように、僕は確かに運にまかせて生きてきたと思う。面倒くさわれわれの子どもの頃は、正月になるとスゴロクで遊んだものだ。少年向けの雑誌の新年号には、必ずスゴロクが付録についていた。サイコロを振って、その目の出たコーナーというか場所に上ったり、時には下ったり、振り出しに戻されることもある。現代の子どもには、スゴロクで遊んだという実感は全くないのではないだろうか。そんな古い時代のアナログ・ゲームのスゴロクを題材にしたのが、今回の『横尾忠則の人生スゴロク展』である。本展のキュレイターは山本さんである。Tadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:横浪 修神戸で始まって 神戸で終る 横尾忠則現代美術館にて開催『横尾忠則の人生スゴロク展』について16

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