─医療施設やインフラがダメージを受けたら、備えていてもやはり限度がありますよね。八田 そこで兵庫県独自で考えたのが、フェリーや自衛隊の艦船など大型船の活用です。船舶は水も電気もベッドもありますので被災者の受け入れが可能で、病院の役割を果たすことができます。これは先々代の川島龍一会長の発案で、行政にもこのアイデアが受け入れられています。まだ実際に稼働はしていませんが、神戸港で2016年と2023年にフェリーで、高知県でも2023年に自衛隊の艦船で訓練が実施されました。─医師会が対策するだけでなく、我々県民も防災意識を高めないといけないですね。八田 その通りで、医師会も県民に向けた啓発活動を積極的に行っています。非常食や水、非常持ち出し品の準備はもちろんのこと、家具の固定などの対策、ハザードマップを確認し、行動などを家族で話し合っておくことも大切です。─医療に関してはどのような備えをおすすめしますか。八田 発災直後、医療資源は人命救助に集中するため、命に関わらないけがは自分で処置するしかありませんが、がれきや割れたガラスなどでけがをすることが考えられますので、ガーゼや消毒液、清浄綿、とげ抜きなどは用意しておいた方がよいでしょう。絆創膏は大きなサイズのものがあると便利です。包帯はけがの手当のほか、止血にも使えます。また、持病のある方は常用薬を最低3日分準備しておき、お薬手帳やマイナ保険証も持ち出しましょう。避難所では集団生活になりますので、感染症防止のため、マスクもあるといいですね。─阪神・淡路大震災から30年の節目を迎える2025年、県医師会はどのようなことに力を入れていきたいですか。八田 災害医療については、JMATの活動がより長く続けられるように隊員を募るとともに、2024年の能登半島地震の活動の検証を行いましたので、それをフィードバックして体制を強化していきたいと思います。また、今後も市民に向けたフォーラムの開催など、啓発活動にも力を入れていきたいですね。─災害対策以外では。八田 医師や診療科の偏在解消に向けた対策を、行政とともに進めていきたいですね。また、財務省と医療界とでは考え方が違っている点もありますが、地域住民のみなさまにとってより良い医療をお届けできるようにしたいです。コロナ対応で公的病院の重要性がはっきりしましたので、採算だけでなく、非常時のことも考慮して検討するべきです。これらの問題は、医療過疎地の災害医療にも繋がります。99
元のページ ../index.html#99