識したので「息の映画になったね」なんて話も。ラストシーンで、灯である富田さんが呼吸を整えてふと空を見上げた時、心からホッとしました。Q.3つのお題の中で最も意識したのは?「心のケア」です。人は誰でもそれぞれ何かを抱えていて、誰にでも辛いことがあると思います。灯を見て、こんなふうに苦しい人もいる、がんばってる人もいる、そして身近にいる人に思いを馳せたり、誰かの立場に立って考えたり…。というようなことを感じてもらえたらいいな、と。最近やっと私もシンプルに思えるようになりました。灯の物語を観てくれた人が、いろんなことを考えたり、感じたり、それについて人と話したり。なにか人と人とが繋がるきっかけになったらいいなと、日々思っています。ちょっとだけ。ちょっとだけでいいので、やさしくなれたら、やさしい世の中になったらいいなと思っています。Q.お題のひとつ「神戸」に住む方へのメッセージをください。神戸にありったけの愛を込めて、神戸でしか描くことのできない物語を作りました。普遍的な物語です。構えずに観てみてください。text.田中 奈都子【出演者】富田望生伊藤万理華 青木柚 山之内すず 中川わさ美 MC NAM田村健太郎 土村芳 渡辺真起子 山中崇 麻生祐未 甲本雅裕【スタッフ】監督:安達もじり(NHKエンタープライズ所属時に製作) 脚本:川島天見・安達もじり音楽:世武裕子エグゼクティブプロデューサー:大角 正 プロデューサー:城谷厚司 堀之内礼二郎 安成洋取材:京田光広【製作】ミナトスタジオ【配給】太秦公式HP【物語】1995年の震災で多くの家屋が焼失し、一面焼け野原となった神戸・長田。かつてそこに暮らしていた在日コリアン家族の下に生まれた灯(富田望生)。在日の自覚は薄く、被災の記憶もない灯は、父(甲本雅裕)や母(麻生祐未)からこぼれる家族の歴史や震災当時の話が遠いものに感じられ、どこか孤独と苛立ちを募らせている。一方、父は家族との衝突が絶えず、家にはいつも冷たい空気が流れていた。ある日、親戚の集まりで起きた口論によって、気持ちが昂り「全部しんどい」と吐き出す灯。そして、姉・美悠(伊藤万理華)が持ち出した日本への帰化をめぐり、家族はさらに傾いていく。なぜこの家族のもとに生まれてきたのか。家族とわたし、国籍とわたし。わたしはいったいどうしたいのだろう―。43
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