KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年1月号
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Q.主人公の灯(富田望生)も被災の記憶はありませんね。心のしんどさは、震災のようなはっきりとした理由がなくても誰もが少なからず感じていて、そう簡単に消えるものではないと思うんです。物語の入口となる灯の状況と、きれいごとで終わりにしない“小さな半歩”、“少しだけの前進”という出口だけは早い段階から決めていました。心の傷が癒えるには時間がかかる。2時間の映画の中で済ませたくはないなと。Q.灯とぶつかる父親(甲本雅裕)を灯目線の一方的な描き方はしていません。父親に感情移入して観る人もいるかもしれませんね。登場人物を誰一人悪者にしたくはありませんでした。何が良くて何が悪いかではなく、生きてきた時代、時間、場所などによって人は変わるし、だからこそ人と人はぶつかるのだと思います。たまたま今ここで一緒に生きていかなくちゃいけない現実がある。人との距離は、その時々で探りながら、言葉は悪いかもしれないけれど、折り合い41

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