KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年1月号
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わたって市内では上下水道が使えず、避難所のトイレは悲惨な状況でした。こんなことが二度と起きないように、翌年から大容量送水管の整備に着手し、20年をかけて完成させています。水を送るだけでなく、市民が必要とする生活用水12日間分を溜め給水拠点として応急給水が可能です。もう一つは、度々浸水していた三宮南部での浸水対策です。神戸の下水道は汚水と雨水の分流式で、雨水は雨水管で流します。3つの雨水ポンプ場と巨大な雨水管を地下に作って、高潮時に雨水が排水出来ない場合に、ポンプを稼働させて海に流すという仕組みを作りました。その結果、2018年の西日本豪雨でも三宮南部では全く浸水していません。東川崎町等の他の地域でも引き続き対策を続けていきます。震災前の神戸市民にとって災害は水害・土砂災害でした。1938年の阪神大水害直後、現在の国土交通省六甲砂防事務所の前身にあたる事務所が開設され、砂防堰堤を造り対策を続けてきました。約80年後の西日本豪雨でほぼ同じ期間にほぼ同じ量の雨が降ったにもかかわらずほとんど被害は出ませんでした。津波対策では南海トラフ巨大地震に伴うレベル2の津波への対策が2022年度に完了、2024年度末には、水門や防潮鉄扉を迅速かつ確実に閉鎖する遠隔操作化事業が完了します。これにより人が居住する地域には浸水しないと想定されます。もちろん災害では想定外のことが起きることを前提にして避難訓練や要援護者に神戸芸術工科大学学長 工学博士 一級建築士 松まつむら村 秀しゅういち一1957年神戸生まれ。灘高校、東京大学工学部建築学科を卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻を修了し、1986年より東京大学専任講師、助教授、教授、特任教授を務め、ローマ大学、トレント大学、南京大学、モントリオール大学、ラフバラ大学の客員教授も歴任。その後早稲田大学理工学術院総合研究所上級研究員・研究院教授を経て、2024年神戸芸術工科大学学長に就任。35

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