KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年1月号
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アイドルを経験した者にしか書けない緊張感、戸惑い、不安、葛藤が、切実に明かされ、外の世界からは伺い知れない〝舞台裏の壮絶な世界〟の中へと読む者を惹き込んでいく。華やかなステージでのデビューを夢見ながらも、莉子の性格は引っ込み思案で、ダンスを苦手としている。「正直、私は歌もダンスもあまり得意とは思っていません。性格もネガティブですし…」 キレのあるダンスを武器とする現役アイドル、安部若菜が〝意外な本音〟を打ち明けた。きらびやかなステージの上で堂々と踊りながら歌う華やかなアイドルの表情とは真逆の一面を見せながら語る安部の物静かで真摯な表情と小説の中の莉子とが重なった。「2作目は、アイドルから離れようと思って書いたのですが、どうしても文章の中には出てきてしまうのでしょうね…」この日の取材が行われたのはステージ裏の楽屋。どんな質問にも真正面から答える安部のひた向きな表情と、ダンススタジオの大きな鏡に映る自分を直視できないでいる自信なさげな莉子の顔とが、やはり重なって見えた。「小説の登場人物には、とくに決まったモデルはいません。ただ、アイドルの仕事を通じて見たり聞いたり経験したものは生かしたいと思っています。NMB48のメンバーたちにも、いろいろと話を聞いて小説の参考にさせてもらっています」と語る。1作目に続いて全編、書き下ろし。「公演や大学の講義も重なり、原稿は新幹線での移動中や公演の合間に楽屋などで執筆しました」と、超多忙な現役アイドルは語る。『私の居場所はここじゃない』1,760円(本体1,600円+税) KADOKAWA29

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