KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年1月号
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《福井藩の医師、笠原(松坂桃李)は、(天然痘)が蔓延し、多くの子供たちの命が奪われていく事態を憂い、京都の漢方医、日野(役所広司)の元を訪れ教えを請い、種痘という予防接種の方法を知る。藩や幕府、他の医師たちの妨害に抗いながら、笠原は種痘を広めるために妻、千穂(芳根京子)の助けを得て、私財を投げ打って研究を進める…》小泉監督が笠原に惹かれた理由は、自分の名誉も家族も報酬も財産も顧みず、ただひたすら人の命を救うことに命を懸けた…その「無私の精神」だと言う。小泉監督が「昔からの愛読書です」という小林秀雄が書いた『無私の精神』について教えてくれた。その中で「有能な実行家」の条件について小林はこう書いている。《現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や意識を捨てる用意のある人だ。物の動きに順じて自己を日に新たにするとは一種の無私である》小泉監督は「己を捨てて誠実に働く笠原良策の姿は、永遠に価値ある歴史を生み、現在に生きる私たちの心に、強く働きかけてくれる…」と映画化を決意。この無私の精神こそ「今の時代に描くべき」と〝笠原との出会い〟をフィルムに焼き付けていく。24

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