末の戊辰戦争で日本が東・西軍に二分される中、民衆を守るために中立を貫こうと命を懸けた長岡藩家老、河合継之助の生涯を描きあげた。いずれも、小泉監督が敬意を表す「己を無に帰し、事に当たった歴史上の人物たち」である。そして最新作『雪の花 ―ともに在りて―』の主人公は江戸時代末期に実在した無名の町医者、笠原良策だ。新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第50回は、正月の話題作として24日に封切られる時代劇大作『雪の花 ―ともに在りて―』を撮った日本映画界の重鎮、小泉堯史監督の登場です。「無私の精神」を活写する重鎮監督…歴史上の〝会いたい人〟を映画で描くTHESTORYBEGINS-vol.50■映画監督■小泉 堯史さん⊘ 物語が始まる ⊘映画監督になって以来、敬意、そして憧れを抱く歴史上の人物たちの生きざまを撮り続けてきた。映画『明日への遺言』(2008年)では、第二次世界大戦後、軍事法廷を〝法戦〟と呼び、米国の無差別爆撃の違法性を主張。部下の命を守るため「自分一人を死刑にせよ」と戦った陸軍の岡田資中将を描き、また『峠 最後のサムライ』(2022年)では、幕歴史上の人物との出会いを求め「新作の題材を決める基準ですか?テーマやジャンルで選ぶのではなく、その人に会ってみたいかどうか。歴史上の人物など自分が〝会いたい人〟を映画で描きたい。これまでも、そう決めてきました」5年ぶりにメガホンを取った小泉監督は熱意を込めてこう語る。文・戸津井 康之撮影・服部プロセス22
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