近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。ライトペディアWrightpediaChapter 8タリアセン(Taliesin)とは、ひと言で言えばフランク・ロイド・ライトの拠点です。住まい、仕事場、弟子たちの学び舎や共同生活の場、自足のための農場などの複合施設で、フランク・ロイド・ライト財団は「木と石で書かれたフランク・ロイド・ライトの自伝」と表現しています。Taliesinというワードはウェールズ語です。「輝く額(眉)」という字義ですが、6世紀に活躍したウェールズの伝説的な吟遊詩人の名前でもあります。ちなみにこの詩人の名は日本では一般的に「タリエシン」と表記されますが、ロック好きの方にはディープ・パープルのアルバム「詩人タリエシンの世界」でおなじみですね。ライトの祖父リチャード・ロイド・ジョーンズは1844年、移民としてウェールズからアメリカへ渡り、やがてウィスコンシンのゆるやかな丘陵地を開拓しました。1911年、ライトは祖父が拓いたこの地にタリアセンを築きます。しかし、1914年に使用人が7人を惨殺し放火、1925年には落雷による電気系統のトラブルから火災が発生。たび重なる悲劇が襲うも、タリアセンはそのたびに復興し充実していきました。緑まばゆい丘の頂上から少し下りたところに建つタリアセンの建築は地形を生かしたプレイリースタイルで、日中はどの部屋にも太陽が差し込むように開口部を工夫したとか。また、近くで採れる石灰石や目の前の谷を流れる川の砂を使用するなど、大地との一体化を試みていたことが素材からもうかがえます。1937年には冬を過ごすため、アリゾナにタリアセン・ウエストを新設。いまはここが タリアセン 144
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