KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年1月号
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榊原先生にしつもんQ.榊原先生は何故、医学の道を志されたのですか。A.初めから医学の道を志していたわけではなく、実は私は理学部にいました。当時は再生医療などまだ全くなくて、再生医学が走り始めたころで私は大学院で網膜再生の研究を始めました。そこで、医学ではなく医療の現場で人を助けるために研究を役立てたいと思うようになり、神戸大学医学部の3年次に編入しました。理学部と医学部、大学に合計10年いることになりました(笑)。Q.榊原先生のリフレッシュ法は?A.リフレッシュ法は家族と生活することです。独身のころは「仕事」と「寝る」しかなかった生活が、その間に「家族」が入ることでリフレッシュできています。子どもとフィールドに出て散策しながら自然観察をしたり、生き物を見たりして「なんでだろう?」と考えています。子どもはハチャメチャで、一緒に行動して考えるのはなかなか大変ですが、私にとってはリフレッシュになっています。Q.病院で患者さんに接するにあたって心掛けておられることは?A.医学部の学生の時、産科の先生が「産科は患者さんが病院から笑顔で帰って行ける科です」と言っておられるのを聞きました。「形成外科も患者さんに笑顔で帰っていただける」と私は思っています。患者さんは病気で困っているから病院に来られます。いろいろ治療を受けてニコニコ笑顔で帰って行ってもらえる。私はそこを目指しています。Q.大学で学生さんを指導するにあたって心掛けておられることは?A.私は理学部で、物事を理詰めで考える教育を受けました。自然科学は当たり前のことを「何故だろう?」と考えるところから始まるからです。一方、医学部は、卒業して医師免許を取ったらすぐに現場で医師として仕事をするための実学の場です。私は医学部の学生さんや研修医にも「何故だろう?」と考えてもらうようにしています。些細なことでも、まず「なんで?」と訊きます。考えることから新しいアイデアが生まれ、医学の進歩にもつながります。だから、考えることが楽しいと思ってもらいたいんですが、ちょっと鬱陶しがられているかもしれませんね(笑)。Q.形成外科を専門にされた理由は?A.当時、再生“医学”を再生“医療”に還元する仕事がしたい、と思い形成外科を選択しました。今は心臓や眼に関する再生が脚光を浴びていますが、形成外科の分野でも皮膚や脂肪の再生医学の研究が進み、医療現場でも徐々に広がりつつあります。今後もこの分野に携わっていこうと思っています。もう一つの理由は、マイクロサージャリーに興味を持ち、顕微鏡の下での手術をやりたいという思いがありました。再建と創傷がうまく融合しているところだと思います。傷がなかなか治らずに困っている方の最後の砦となり、手術も取り入れながらきれいに治していく。これは誇れるところだと思います。―神大病院の魅力は?大学病院には高度な医療を提供する診療科がそろっています。神大病院は各診療科間の垣根が低く、がんの治療においても他科と連携したチーム医療がやりやすく、形成外科の再建術が加わることで患者さんのQOL(生活の質)向上に寄与するだけでなく、がんを確実に切除する治療にも貢献しています。それが患者さんを第一に考える医療につながっていると思います。109

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