開港を機に根づいた「神戸洋食」は、日本の洋食の起点とも言われています。戦後間もない頃、『みその』が考案した鉄板でステーキを焼くスタイルや、クロッシュ(カバー)の使用、ニンニクチップなど、神戸発祥の洋食スタイルも多々。フランス料理の世界を確立した後、フレンチの技術を活用したビストロが生まれ、その流れを汲んだ洋食が広がっていきました。神戸洋食が様々な要素を取り入れながら日本人の口に合うよう進化を遂げてきたのは、異文化を吸収し、混じりあうことを受け入れる市民がいたから。暮らしに合わせ海外文化を楽しむ能力に長けていたのだと思います。私が神戸洋食として思い浮かべるのは『欧風料理もん』です。味はもちろん、しつらえも素晴らしい。伝統のビーフカツサンドは、様々な店が真似し、バーフードとして提供するバーも増えたとか。また神戸洋食といえば、「グリル一平」も外せません。新開地本店ほか三宮や元町、西宮にも店があり、地元の人々に愛され、日常的に使われています。ハレの日だけでなく、日常の延長として楽しめるのはバーにおいても同じこと。バー『YANAGASE』の二代目マスター中泉勉さんには、バーで一杯ひっかけてから食事に出かけ、食後に戻ってきて、バーフードをつまみながらシメの酒を飲むという遊び方を教えてもらいました。神戸のバーでは趣向を凝らしたフードも楽しみの一つ。惜しまれつつ閉店した店で記憶に残るのは『ルル※』です。カナッペとカクテル、白いメスジャケットにボウタイのダンディなマスター長原良明さんが魅力的。旧神戸朝日会館地下の『コウベハイボール※』では氷を入れないハイボールとカレー風味のピクルスを。神戸人の遊び心を満たしてきた洋食とカクテル フードコラムニスト 門上武司さん関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。(一社)全日本・食学会 副理事長、日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会関西支部の会長を務める。また、京都芸術大学 食文化デザインコース(2024年4月開設)には講師としても参加。https://www.geode.co.jp/神戸ファッション協会主催食文化発信事業これからの洋食202438
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