ということは、直線ばかりが西へ向かって走っていて、両側の建物の稜線と合わせ対角線を形作っている。これが美しい、とわたしは思うのだ。その対角線の焦点の辺りが、遠く六甲の山の端になっていて夕焼けが哀しいほどに美しい。そこに向かって客人は歩いて行かれる。このほど久しぶりに同人誌に参加した。九人で創刊したのだが、そのタイトルはわたしが提案した「対角線」に決まった。実にこの景色からの発想だった。前に参加していた同人誌は、詩人安水稔和氏が主宰する『火曜日』だった。2015年に120号をもって終刊して以来だから9年ぶりのことになる。創刊号は42ページ、つつましやかな冊子である。そこにわたしは一篇の詩を載せた。その詩「直線」の部分。直線が好きだ自然界であろうと人工のものであろうと真っ直ぐの線が好きだ電柱がいい空を区切る電線もいい水平線が好きだ天使の梯子 薄明光線も好きだ直角三角形がいい平行四辺形がいい不等辺三角形がいいさらに対角線が好きだそして そしてわたしが最も好きなのは真っ直ぐに見つめるおまえのその視線だ。(実寸タテ15㎝ × ヨコ10.5㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)、随筆集『湯気の向こうから』(私家版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。93
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