程度の組織を取り出します。肺がんのほとんどが気管支鏡で見えない部位にありますので、確実にがん細胞を採取するには高度な技術が必要です。神大病院呼吸器内科ではその診断率を最大限高めるために、病変に確実にたどり着く道筋を教えてくれるカーナビのような「仮想気管支鏡ナビゲーションシステム」や、病変に確実にアプローチしていることを確認する気管支鏡下超音波システムを併用しています。私自身、このナビゲーションシステムの開発に携わっていたこともあり、当院は最先端の機器の導入に関して全国的に先駆的な存在です。少なくとも3人以上の呼吸器内科医がチームを組んで検査にのぞみ、小さながんでもできる限り診断できるよう工夫しています。―患者さんにとっては胃カメラの検査のようなイメージですか。食道は日頃から食べ物など異物が通っている道ですが、気管は空気だけが通る道です。そこにカメラという異物が入るのですから、患者さんにとっては胃の検査よりつらいものになることが多いです。そこで大事になるのが鎮静・鎮痛です。適切な薬を使いながら、なるべく患者さんの苦痛を取り除く検査スタイルを心掛けています。さらに大学病院ですから、苦痛が少なく、より安全な検査方法を研究しています。―検査、診断後にいよいよ治療に入るのですね。取り出した組織を使う診断と併せて、広がりや転移の状況をPET-CTやMRIなどを使って調べ、病期(ステージ)を判断してから治療に入ります。そのためにはチームでの連携が重要で、呼吸器内科・外科、放射線科、放射線腫瘍科、病理のドクターが週1回集まりカンファレンスを行います。一人一人の患者さんについて診断に間違いはないかを検証し、最適な治療方針を決めています。進行期の場合は、分子標的薬・免疫療法・抗癌薬から適切な薬物療法を選択したり組み合わせたりして治療します。手術可能なステージの場合、従来は手術をしてから術後に抗がん剤を行うことが一般的でしたが、今は検査結果に沿って、手術先行が良いのか、その前に薬物療法や放射線治療を行ったほうが良いのかなど、患者さんに最適な周術期治療ができるよう話し合って進めています。外科治療のほとんどが胸腔鏡下で行われて低侵襲ですが、チーム連携した周術期治療でより根治を目指した治療が可能になっています。―気管支鏡は肺がんの診断だけでなく、他の呼吸器疾患の診断や治療に用いることもあるのですか。はい。他の呼吸器疾患の診断や治療にも広く用いられています。例えば、一般的な抗生剤を用いても治らない肺炎の原因を調べたり、肺胞が硬くなる間質性肺炎の精査を行ったりします。その場合は、気管支鏡を使って肺の中に少し水を入れ取り出して、顕微鏡で見たり、成分を分析して原因を突き止めたりします。治療においては、がんが進展して気管支が狭窄し86
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