KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年11月号
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日本のがん死亡率第一位は肺がんです。肺がんはまず手術で取り除くというイメージですが、発見されたときには進行期であることも多く、どの病期においても薬物療法が重要なようです。立原素子先生に最先端の診断・治療法についてお聞きしました。―呼吸器内科では体の中のどの部分の疾患を扱うのですか。喉の奥の空気が通る「気管」の部分から二つに分かれる「気管支」、だんだん細くなり枝分かれしていく「細気管支」、そこから続くぶどうの房のような形をした「肺胞」に至る一連の器官の疾患を呼吸器内科では主に扱います。胸郭の内側と肺を包む「胸膜」も含み、例えばアスベストによる中皮腫はこの部分にできる悪性腫瘍です。それに加え、肺、心臓、血管を除いた胸郭内の部分を指す「縦じゅうかく隔」全体の疾患も呼吸器内科の領域です。―神大病院で診断・治療をする呼吸器疾患のほとんどが肺がんですか。呼吸器疾患で入院する患者さんの約8割が肺がんの患者さんです。高齢化社会に伴ってがんのリスクが高まっています。進行肺がんで見つかる患者さんの半数以上が75歳以上の高齢の方です。―肺がんの原因や性質はいろいろあるのですか。肺がんは大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に分類されます。小細胞肺がんの多くは喫煙関連で、血液やリンパにのり転移しやすく進行が速いがんです。非小細胞肺がんはさらに、扁平上皮がん、大細胞がんなど細かく分類されますが、最も多いのは腺がんです。腺がんの約半数は喫煙関連ではなく、肺の一部に遺伝子変異が起こり発症する「ドライバー遺伝子変異がん」で、煙草を吸わない方や若い方でも発症します。この遺伝子変異は一般的には小細胞肺がんには見られません。ドライバー遺伝子変異陽性の肺がんの場合は、それに対する分子標的薬が効果的です。―喫煙が原因の小細胞肺がんは進行が速く、遺伝子変異で神大病院の魅力はココだ!Vol.37神戸大学医学部附属病院呼吸器内科立原 素子先生に聞きました。84

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